浪漫草紙

~生れる前の昔恋しき~

「身がわり」

有吉佐和子の「非色」を読み始めた。
この一年ほどずっと書店で、今、読まれています!とかNHKで紹介されたとかいうPOPと共に平積みになっていた。
2020年に復刊され、あたしが買ったのは2022年の版で第5刷とある。
有吉佐和子作品は色々読んだけれど、これは未読だった。

その本を読み始めたところへ、ブックオフで有吉玉青の「身がわり」を見つけたので買ったが、それが、ええっ!?となる代物だった。

著者のサインと前の持ち主の名前が入っていた!

本を開くとすぐに写真で、扉ページにサインが入っていたことに、帰ってから気づいた。

別に珍しいことではないだろうけど、あたしはそんな本に遭遇するのは初めてだった。
びっくりした。
いや、ブックオフではもっとびっくりした本を見たことがあるけれど…おばあさんの写真が挟まっていたり、診察券が挟まっていたり…。


古本の来歴を想像するのが好きだ。
自分の手元へ来るまで、どんな経路を経てきたのか。
前の持ち主はどんな人だったのかとか、まぁ、ブックオフに多くあるような最近の本では、あんまり思わないけど、やっぱり大正・昭和初期の本となると、よく思いを巡らす。

それよりも「身がわり」のこと。
文庫版で、出たのは平成4年。
サインと共に日付も入っていて、数年前である。
そこに興味が湧く。
真新しい綺麗な本が多いブックオフの中でも、これは古びて紙もヤケて茶色く、多分、そのサインが書かれた日付でも同じ状態だったと思う。

数年前に、わざわざこんな古びた本にサインをしてもらったって、どんな状況だったんだろう?
(本が出た当初の日付だったら、それほど疑問でもないのか?)
前の持ち主の愛読書だった、著者に会う機会があった、それだけのことか?
で、売られたのはどんな状況かなぁ…と思うが、遺品整理とか?じゃあ、同じ持ち主の本がほかにもあのブックオフに?有吉玉青の本は他にない。
ブックオフではサインは書き込みと同じ扱いで評価は下がるのみ。多分、買い取りの時に、お値段つきませんが…といわれていそう。

そしてあたしも考える…あたしの持っている本は、あたしが亡くなった後、どうなるか…例えば、100年以上残って来た本が、あたしのもとで行く末は捨てられることになるなら、あたしが持つべきではないと思ったり…それを思うと、何を買うのもむなしくなるけれど。

それと、和歌山市の有吉佐和子記念館にも行ってみたいと思うこの頃。