浪漫草紙

~生れる前の昔恋しき~

「まひるの月を追いかけて」に浸るためのルートメモ

「まひるの月を追いかけて」に浸るためのルートメモ

<少しずつ雲が剝がれてきて、薄青色の空がかすれたように見えてくる。
ぽつんと小さな白い月が覗いていた。
「奈良くらい月が似合うところはないな」>

まったり、ちんたら読んでいた「まひるの月を追いかけて」をついに読み終えた(再読)。

珍しく噛み締めるように読んだ。何をそんなに惹かれるのか?

この小説の通りに奈良をめぐりたいと先日書いたが、順番にざっとこんなルートだった。

 

一日目 橿原神宮、藤原京跡、今井町、明日香村の民宿に泊まる

二日目 明日香村…欽明天皇陵、高松塚古墳、橘寺、石舞台、岡寺、蘇我入鹿首塚、甘樫丘、天理のホテルに泊まる

三日目 山辺の道、石上神宮、長岳寺、大神神社、桜井駅、近鉄奈良駅近くのホテルに泊まる

四日目 奈良公園、興福寺、新薬師寺、白毫寺、春日大社、二月堂、東大寺

五日目 法隆寺、中宮寺、橘寺

 

この物語の登場人物たちはとにかく歩く…飛鳥駅からレンタサイクルに乗ったりしない、出てくる交通手段は電車だけ。

確か飛鳥駅から橘寺は歩いて30分ほど、岡寺も最寄りの岡寺駅から離れた山の中で、駅から歩いたら40分はかかる。

歩く歩く…一日に7時間くらい歩く…きっと会話をするために歩くんだろう。
わたしも夏の真っ盛り以外なら、歩くのは好きだが…7時間歩き通しとか無理…作中の季節はお水取りが終わった3月中旬とはいえ…。

 

<明日香はどことなく箱庭じみている~>だの<明日香は子宮の中の羊水のようだ~>という表現も良いが、特に印象的なのはこの台詞。

「こうやって歩いていて、土塀越しに空を見ると、自分が違う国にいるような気がするんだ」

(略)~

「同じ日本なんだけど、もうちょっと昔で、あるべき姿だった日本って感じかな」

「うまく言えないや。雰囲気的には昭和初期くらいで、戦争も高度成長もなくて、静かでゆったりして、人工物はほとんどない日本っていうイメージなんだけど」

わたしも古い建物や昔ながらの街並みにあったかもしれない日本の面影…それを見ていたのか。

これも良い。

<遠くなんかどこにもない。どこに行っても次の「ここ」があるだけで、自分からは逃げられないのだ>

読み終えて思うのは、良い終わり方だということ…ラストを迎えても、すべてがすっきり…というわけではなく、むしろ物語の終わりが、新たな物語の始まりなのだという…。

改めて読んで…白毫寺へ行ってみたいと思った。この作品とは関係ないけど、長谷寺にも行きたい。